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大阪高等裁判所 昭和43年(ラ)5号 決定 1968年6月04日

抗告人 山下扶美子(仮名)

相手方 藤野ひろみ(仮名) 外五名

主文

原審判を取り消す。

本件を神戸家庭裁判所洲本支部に差し戻す。

理由

抗告人は原審判には不服がある旨申し立て、その理由とするところは、別紙に記載したとおりである。

抗告の理由第二項について

記録によれば、原審は、相続財産を組成する個々の不動産を評価するにあたり鑑定等の措置をとることなく、固定資産税の課税標準価格としての物件所在地町長の評価額をそのまま採用し、そして遺産分割の方法としては右不動産を個別に一部の相続人に帰せしめ、不動産を取得する者はその不動産の右評価額に相応する額を取得するものとし、これを前提として遺産の分割としていることが認められる。しかし右の評価額なるものは不動産の現実の時価と一致しないのがむしろ一般の事例というべきであるから、このような価額を基準として右の分割方法をとるときは、不動産を取得する者とそうでない者との間に、また不動産を取得する者相互の間にあつてもいずれの不動産を取得するかによつて、過不足を生ずることを免がれず、ひいては相続財産を組成する他の財産の取得についても異動を及ぼす結果となるのであつて、この点において原審判には遺産の相続分に相応する分割に欠ける違法があるものといわねばならない。

よつて、その余の抗告の理由について判断するまでもなく、本件抗告は理由があるので原審判を取り消し、当裁判所においてみずから事件につき審判に代わる裁判をするのは相当でないと認めるから、本件を原裁判所に差し戻すこととして、主文のように決定する。

(裁判長裁判官 小石寿夫 裁判官 宮崎福二 裁判官 館忠彦)

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